君と私で、恋になるまで
繋がれた手の指をしっかりと絡める男に、視線だって心だって、捕らえられてもう離されない。
「……あのさ。」
「うん…?」
「今も結構、明野さんと会ってる?」
「え?」
目の前の男は、いつものロートーンボイスにちょっとだけ不機嫌さを混ぜてそう尋ねてきた。
ふい、と目線を外しながら、でも手を握る力は込めてくるからその緩急にやっぱり私は敵わない。
___それってもしかして、やきもちだったりする?
ゆるゆると口角が上がっていってしまう私を一瞥した気怠い男は、不満げに目を細める。
「……楽しそうですね枡川さん。」
「…瀬尾。」
「なに。」
「明野さんはやっぱり、△社で会うこともあるよ。何より松奈さんにうちを推してくれたから、感謝もしてる。」
「うん。」
いつだって、私の言葉をこの人は絶対に最後まで聞いてくれる。
だから、ヘタレだけど、勇気をだしてちゃんと伝えようって思える。
「……でも、私、今ちょっと浮かれてるから。」
「…?」
「今日、明野さんに会った時。
瀬尾のこと、格好いいって褒められて。
"凄く"までつけて、肯定してしまったよ。」
「、」
嗚呼、顔が絶対に赤い。嫌でも分かる。
「……反省はしてますが、私の本心だから。」
繋がれた温度を閉じ込めるように、私も手に力を込めた。
「な、何が言いたいかと言うと、私は、瀬尾ばっかりだよ。」
本当に自信を持って、言えてしまう。