君と私で、恋になるまで
そんな私を確認した瀬尾も、少しだけ微笑んで、でもそれから不自然に視線を逸らした。
そして。
「……まあ、面白く無いこともある。」
「?」
「…ちひろが買った服、見られてない。」
「……え。」
「何であの女が先に見てるのかも、まあまあ不服。」
少しだけ奥二重の瞳を細めて呟く男を、私は見つめるしかできない。
どうして、知っているの。
視線がかち合った瀬尾は、私が言いたいことに気づいたのか、
「島谷にLINEでマウント取られた。」
と不機嫌に呟く。
それが何だか妙におかしくて、可愛らしいと思ってしまって思わず沢山笑う。
「……まあ、良いか。」
「何が?」
「だって、仕事終わったスーツ姿のまま、真っ先に俺のとこに来てくれたし?」
「、」
先ほどまでちょっと子供らしさがあったくせに急にそう言って、私をあっさり抱き寄せるこの男の緩急は、どうなってるんだろう。
気怠い雰囲気、ゆるい笑顔、
そのくせに瞳に月明かりを取り入れて鋭さを帯びる。