君と私で、恋になるまで



「しかも、会いたかった、だって。」

「……」


この男は、どうして私が恥に負けずに頑張って言ったことを、わざわざ繰り返してくるのか。

そう思うけどあまりに嬉しそうな顔を前に、完全に目が泳いで、顔も真っ赤なまま、私は否定する力を失う。



「ちひろ。」

「な、何。」

「……俺はお前に休日に会う約束を取り付けたら、それだけでとりあえず満足できる。」

「……」

“休みの日も会えるの嬉しいなあ〜で、完結してたんでしょどーせ。“


瀬尾の発言に、亜子の指摘を思い出す。

目の前のこの男も同じ気持ちだと知ってしまって、胸がじんわりするこの感覚は、愛しさ以外には考えられない。


「…その嬉しさで、デートの内容をちゃんと伝え忘れたりもする。」

「……そ、そうだったんですか。」

「そうでした。」


クスクスと心地いい笑い声を夜の中に潜ませて、男は楽しそうに自白する。


そして。


「___明日の日曜日も、俺が貰っていいの?」

「、」

そっと私の頬に左手を優しく寄せて、微笑む男が呟く言葉にパチパチと目を瞬く。


そして、顔の熱はあっけなく上がる。


そうだ、私たちは本当に思ったより、何もこの“休日デート“の予定を決めていなかったことに気がつく。


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