君と私で、恋になるまで
"亜子、ちょっと買い忘れたものあるから此処で待ってて。"
"……私も行くけど?"
"い、良いから…!!此処から動かないで!!"
__本当は。
可愛いランジェリーショップでも、買い物をした。
“そんな遠慮しなくても、下着も選んであげたのに?“
多分、あの教官はそんなことお見通しだ。
これは、絶っっ対に目の前の男には言えない。
それでも日曜日の提案にはコクコクと頷く。
「…じゃあ凹み気味の枡川さん。
どっか居酒屋でも行く?」
「……」
でも。
そのまま微熱のようなずっと触れていたい温度で手を繋いで、そう提案してくる瀬尾に。
言いたいことはある。
「……家で、なんか作っても良い?」
「え?」
「……私は、梅水晶も、たこわさも、塩辛も好きだけど。」
「うん、知ってる。」
何を今更。そんな風に軽く肯定される。
「……でも、な、央がいれば、それで良いよ。」
カアアアと際限の無い赤みが、余すことなく顔の色を変えていく。
でも前は、おつまみに隠してしかちっぽけな本音を言えなかったから。
ヘタレな自分を鼓舞して、やっと伝えられた。