君と私で、恋になるまで
繋がれた手をそのままに「だからスーパーへ行く!!」と勢いよく告げて歩みを進めようとすると、
くん、と引っ張り直されて、元の位置へ戻ってしまった。
振り返れば、私をあっさりと捕らえる瞳。
「……おつまみより俺が先?」
「……当たり前じゃん…、」
小さな声でそう言えば、男は優しく笑った。
今度の映画“デート“は私から誘おうと、その笑顔を見つめながら思った。
episode02.「映画鑑賞会?(リベンジならず)」
fin.
"…ごめんなさい。"
当日電話をかけて来た女の、
今にも消えそうな声に苦笑いを溢す。
嗚呼、前の映画の時は逆だったな。
責めるどころか、気にしないでと笑って
仕事のサポートまでしてくれた。
多分また、現場をスーツにヘルメット姿で
駆け回っているんだろう。
あれは本当にまじで、やけに可愛い。
あー、無理。
俺は、お前みたいに聞き分けが良くない。
だから他の予定を入れる、
とかそんなことは今更出来ない。
夕方をすぎて、とりあえず何処かまで
迎えに行こうかとエントランスを降りる
スーツを着た愛しい姿があった。
驚いて見つめれば、
「……会いたかった、」
とそんな爆弾を簡単に落としてくれる。
それ、絶対俺の方が思ってたけど。
“あんたら映画に一緒に
行けない呪いでもかかってんの?“
スーパーからの帰り道、
島谷からそんな連絡が来ていたと苦笑うちひろに
軽いリップノイズを伴うキスを落とした。
別に、良いけど?
だって、これから何回だって
映画“デート“くらい行けるし。
平然とそう言えば、
「真飛 葉子監督の映画も、いこうね。」と
顔は赤いままに微笑む彼女に、
「その時は、買った服着て来て」と笑った。
…なんかあの女の思うツボな気がする。