君と私で、恋になるまで
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「……え!?俺がキューピッドってこと!?」
「声でかい。」
もはや立ち上がりそうな勢いを持って、そう大きな声で確認する目の前のアホな男に、隣の気怠い男は遠慮なく顔を歪ませた。
「で、でも俺が入社式で寝てたから枡川は笑って、それ見て瀬尾はきゅんってしたんじゃん!?」
「…よく恥ずかし気も無くそんなこと言えるな。」
「古淵、声が本当にでかい…」
未だ顔を歪ませたまま言葉を吐く男と、声の大きさを頼りなく指摘する、私の隣の真っ赤な顔の女。
「…きゅん、とかじゃ無いでしょ古淵。」
「へ?」
「ちひろの笑顔見た瞬間、もう盲目的に恋に落ちちゃってたんだからこの男。」
パスタをくるくると巻きつける片手間に、そう告げてやる。
「も、盲目的!?!?」
「……。」
私の言葉をでかい声で繰り返す古淵に何も反応しないちひろは、もうカッチカチに体を硬直させていて、動けないらしい。
そしてもはや言葉も失って、手を止めて睨みつけてくる右斜め前のダルそうな男と目があった瞬間、私はにっこりと微笑んでやった。