君と私で、恋になるまで
思わず言った私に、女は今度はケラケラと笑う。
「だから、島谷さんの志望動機は凄いと思った。」
「…は?どこがよ。」
「ちゃんと企業研究して会社選んでるから。
私なんか何にも分かってないよ、ここ福利厚生良いの?
教えて欲しい。」
「…そりゃ、あんたよりは勉強してる自信ついたわ。」
「私は代わりに外ランチの場所いっぱい教えるから。」
「いや、受かってからで良いわそれ。」
ポンポンと交わされる会話の中で、そう最後に突っ込みをすればやっぱり女は楽しそうに笑っていた。
変なの。
だけど、この女には嫌味とかそういうものがやっぱり無くて、私はその日初めて自然と表情を緩めてしまった。
◻︎
そうしてなんとか無事に午後の部も終わって。
ジャガイモが一人で突っ走って話を進めようとするから本当に疲れた。それでも、最後の発表もとりあえずは形になって良かった。
社員の方々に挨拶をして、会議室を出ようとした時、
チラリと自分達の席を振り返ってもあの変な女の姿はもう無かった。
それになんとなく、「なんだ、つまらないな」と思ってしまった自分に驚いた。
気を取り直すように再び歩き出したところで、「島谷さん。」と声をかけられる。
再び振り返れば、そこにはジャガイモ。
「駅まで一緒に帰らない?」
なんでだよ、と言いたい気持ちをギリギリで耐えてまだ会社の中だし、と曖昧に笑った。