君と私で、恋になるまで





そのまま、適当に近くの居酒屋に入ってお酒を飲みながら語り始めたら、あっという間に終電が迫って2人で焦った。


慌てて駅へ向かって、別れる直前。


「…就活頑張ろうね。」

そうお酒であっさり赤くなった顔のままに笑う女に、私も思わず微笑むと「あ、それ。」と私の顔を指摘してくる。

「何?」

「今日初めて会った時、微笑まれてドキッとしてしまったなあと思って。」


そういえばあの時、友人達に"愛想良くしろ"と言われたのを思い出して、私は珍しく笑ったのだ。


「……まああれ、気持ちこもってなかったけど。」

「そーなの!!?酷いね!?」


気づかんかった、と驚く女にやはり笑ってしまった。


こういう出会いもあるならたまには愛想良くするのも悪くないか、と柄にもなく思う。


「…ねえ。」

「…?」

「……絶対、受かってよ。私も受かるから。」

「……え。」

「そしたら、同期として外ランチいくらでも付き合ってあげる。」


そう言えば、女は綺麗な顔をやっぱり屈託なく崩して嬉しそうに笑って頷いた。



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