君と私で、恋になるまで
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「あ〜〜!!ムカつきます!!!」
「…ま、まあまあ、落ち着いて。」
「無理です!!見ましたかあの憎たらしい顔!!?」
「う、うーん…?
同期だから心を許してるんだねきっと…!」
「いーや、ちっがいますねあれは!!!」
ハキハキと、そしてプリプリとした声で豚汁定食に食らいつくのは私の直属の後輩として今年入ってきた、梨木ちゃんだ。
薄くストライプの入ったダークグレーのセットアップスーツをきちんと着こなす彼女は、食事に邪魔だったのか、焦茶色の肩まで伸びた髪を眉間に寄せたままヘアゴムで纏めている最中。
「梨木ちゃん、とりあえず落ち着いてご飯を味わおう?」
「美味しいですよ!!!!!」
…めっちゃ怒るじゃん。
小さい口に白ご飯を沢山かきこんで咀嚼する様はちょっと小動物っぽい。
長い睫毛に縁取られた愛くるしい瞳も、小さめな鼻も、色白の彼女にぴったりでとっても可愛らしい筈なのだけどそんなことはお構い無しに全力で顔を歪める様子に、少し笑ってしまう。
「この子も相当ぶっとんでそうねー、流石ちひろの後輩。」
「どういう意味?」
テーブル席で私の隣の亜子は、焼き鮭定食を食べながら失礼な感想を実感を込めつつ漏らした。
「そのままだけど?」
「亜子ってオブラートというものを知らないよね。」
「うん。断捨離得意だからこの間、捨てた。」
「亜子さん格好いいです。」
梨木ちゃんは、先程まで怒っていたのに亜子の発言にそんな風に尊敬を口にする。この女をお手本にするのはやめて。