君と私で、恋になるまで
「有里君、凄い人気って聞いたけど。」
「気の所為では!?」
亜子の言葉にも、鼻息を荒くしたままご飯を頬張る梨木ちゃん。
有里君、とは梨木ちゃんの同期で今年同じく営業部に配属された男の子だ。
なんと古淵の直属の後輩にあたり、それを知った時はいつも自ら積極的に意見しない瀬尾でさえ「え、大丈夫?」と言葉を漏らしたほどで。
「でも古淵をうまくあしらって、コミュニケーション能力も高いし、みんな期待してる感じだったよ。」
「あんた、あしらうってまあまあ失礼だけど。」
「あのなんでもこなしてるみたいな、薄ら笑いの能面も腹立つんですよ!!!!」
本当に一体何があったのか、営業部として顔を合わせて研修を受けてもらう機会も多い梨木ちゃんと有里君は、その度に睨み合いをしている。
「うちの同期では、ここまでのバチバチ感無かったから逆に新鮮だね。」
「私はあんたの彼氏様と毎回バチバチやらせてもらってますけど?」
「……」
仕事関係無いところでバチバチするなよ、という非難の目を向けても、当の亜子は全く気にしない。
「そ、そうだ…ちひろパイセンは同期恋愛してる人だった…私には絶対考えられないです……
どうやったらそうなるんですか!?」
「梨木ちゃん、食べ終わったならそろそろ出ようか。」
「あ、逃げた。」
「逃げましたね。あと私、まだ食べてます。」
私の不自然な誘いに全く乗らず、クスクス笑うこの2人はもう既に息がぴったりで困る。