君と私で、恋になるまで



今日は、久しぶりに亜子と時間を合わせて、気になっていた洋食屋さんへランチに訪れていた。


「…ちひろの”足りない”って、私だけじゃないでしょ。」

「え?」

「あの童貞男ともあんまり会う時間取られてないんじゃないの?」

「‥‥亜子先生、その名前いつまで引きずるのでしょうか?」

私が恐る恐る尋ねると、つーんとした顔のまま「あんたらの結婚式まで」と平然と言われてしまった。

「それは相当長引きそうですね…」

「話、進んでないの?」

「…瀬尾も今ちょうど
忙しくなっちゃったからなあ。」

「あー、インターンね。」


この時期、どの企業でも採用活動の一環として、インターンシップの開催が活発になる。

うちの会社も例に漏れず1WEEKインターンが丁度来週から始まる。
グループワーク中心のそれは、最後はコンペを行うそれなりに大規模なもので、各部署の社員との交流もしつつ進めていくらしい。


デザイン部代表として瀬尾は人事から協力を要請されていた。

「あの気だるい男に、愛社精神とか熱いこと伝えられんのかしらね。」

「どうだろう…」



___”吉澤さんに、もうほぼ無理やり
メンバー入りさせられてたんだけど。”

吉澤さん、というのは私たちが入社した時から人事部の採用担当として、研修中もずっとお世話になってきた方で。
バリキャリの権化のようなクールビューティーだが、亜子とはまた違う意味で鬼のスパルタさを持ち合わせている。
研修中みんな何度怒られたか分からない。
(一番は勿論古淵。)


”央が就活生に語るの、
なんか想像したら面白いね。”

”どういう意味だよ。
お前の方が面白いから安心して。”

”なんなの?安心できないわ。”


クスクス笑っている電話越しの声さえ、聞くことを重ねるたびに好きを募らされてしまうから、本当にこの男は危険だと思う。


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