君と私で、恋になるまで
「ぎゃ!!俺の瀬尾が学生にもモテモテ…!
じぇらしー!!」
「さっきからその、"俺の"ってなんなの。」
「彼女に対する謙遜?」
「"牽制"ね。」
何故か上目遣いでまた日本語を間違えている我が同期に溜息を吐いて視線を移せば、確かに”モテモテ”という表現がピッタリなほど、瀬尾は囲まれたままだ。
あの男は、ゆるくて気怠い雰囲気をいつも纏うくせに、どこか人を惹きつける。
そして、囲んでいるその中には、フレッシュな装いの女の子たちも勿論沢山いる。
それを確認した瞬間、全く予想していない速さで心に靄がかかって、そういう自分に思わず顔を顰めそうになった時、
「___すいません!
今日Bグループで発表してた者です!
あの、俺達のプレゼンどうでしたか!?」
「…へ?」
急にそう話しかけられ、
拍子抜けした声が出てしまった。
「吉澤さんが、"社員にも感想聞いたら?"って言ってくださって!」
「率直にご意見いただけたら嬉しいです!」
「それで俺らのとこに来るの、君たち良いセンスしてるな!」
隣の男が何故そんなに自信満々なのかはさておき、
食い気味にやってきた学生達が、私たちを期待を孕んだ綺麗な瞳で見つめている。
やっぱりフレッシュで可愛らしいなと笑みがもれて、自分なりに各グループについてメモしていた部分を覚えている範囲で伝えた。
「(…声は、かけられないか。)」
学生さん達との話を終えた後、お疲れ、くらい直接労いたかったけど、気怠い男は、まだまだ色んな人と話が尽きなそうだった。
凄いな、頑張ってるな、と思いつつちょっと別の気持ちを感じ始める自分を掻き消すように、「フロアに戻るね」と、古淵にだけ挨拶をして会議室を後にした。
◻︎
「瀬尾も桝川も、うちの広告塔として頼もしいわ。」
「吉澤さん、俺は!?」
「あんたはアホさが滲み出てるから駄目。」
「ぴえん。
まあでもあの2人はな~〜本当に良いですよね。」
「良いって?」
「へ?…ああ、いやほら、ね?
イイネ!ボタン押したくなる感じですよね!」
「あの2人、いつから付き合ってんの?」
「…な、なぜご存知で!?」
「あ、やっぱり?そうだと思ったわ。」
「ぎゃーーー嵌められた!!!」
「あんたが勝手に嵌まりにきたんでしょうが。
桝川に後でメールしとこ。」
「俺また怒られるじゃないですか~~」