君と私で、恋になるまで
「わ、私は今日のために、服を買いました。」
「、」
「それくらいには、楽しみ、だったよ…、」
嗚呼、相当恥ずかしいことを言わせていただいている。逃げ出したい。
誰にも告げるつもりの無かった私の行動をもはや本人にバラしてしまったことに泣きそうになったけど、でも言わないと、後悔するような気がしたのだ。
しかし、しまった。
言ったのは良いけど、この後どうするのかは考えていなかった。
自分のサンダルを見つめて、事の行く末に不安が過った時、
「、」
自分の前に影ができて、瀬尾が私のすぐ傍まで来ていたことを知る。
「私服姿、かわいいです。」
「っ!」
そう恥ずかしいことを平然と言ってゆるりと笑う男は、もういつもの調子で。
そんな言葉のせいで、もっと真っ赤になって目を瞬く私を見て、瀬尾は吹き出した。
私の腕を引いて、「じゃあスペインバルでも行きますか」なんて、のらりくらり言ってくれる瀬尾に私は頷くしかなくて、それさえも満足したようにやっぱり男はゆるりと笑った。
映画鑑賞会、とかそんな名前を使わなくたって、休みの日も会いたいって、私、いつになったら言えるんだろう。