君と私で、恋になるまで
「…大学時代のメンバーで飲み会?」
「うん。今週の金曜なんだけどね。」
「ふーん、未だにそうやって集まって仲良いのね。」
「年1、2くらいで集まってるみたい。」
「…みたい?どういうこと?」
いつもの様に外ランチをした帰り、フロアへ向かうエレベーターのボタンを綺麗なピンク色のネイルで彩られた指で押した亜子は、訝しげに聞き返してきた。
「……卒業してから今まで、行ったこと無くて…」
「あーーなるほど、元彼くんね。」
「…」
困った様に笑うしか無かった私を見て、亜子は肯定と受け取ったらしい。
「まあ、気まずいわよね。
でもさ、もう3年くらい経つわけでしょ?」
「そうだね。それに、今までずっと断ってるけど毎回誘ってくれるのも、申し訳無くて…」
私は、就職して研修を受けている期間に一樹と別れた。
学部が同じだったということは、大学時代のコミュニティは自ずと似たり寄ったりなわけで。
私達が付き合っていたことは、仲のいいメンバーには周知だったから、私が行ってみんなに気を遣わせるのもなあ、という思いがあった。
あとは単純に仕事がずっと忙しかったというのも、もちろんあるけど。
「別に行けばいいじゃない。
今やちひろちゃんは、うちの同期にゾッコン状態なわけだし?」
「ちょっと!?!?」
はん、と笑ってこちらを見る亜子。
こんな所でなんて爆弾を投下してくれるんだ!!と必要以上に周りをキョロキョロしてしまった。
チン、と高い機械音が耳に届き、エレベーターが来たことが知らされる。
もう早く乗って仕事に戻ってしまいたいこの女の突然の砲弾が怖い、という気持ちでドアが開くのをいそいそと待つ。