君と私で、恋になるまで


◻︎



「…では、打ち合わせを始めさせていただきます。本日もよろしくお願いします。」

「「「よろしくお願いします」」」


次の日、香月さんのオフィスに、うちのプロジェクトチーム総出でお伺いしていた。

キックオフは少し前に終わっているが、規模が大きい分、チーム全員で案件の方向性を定期的に確認しに行くようにしている。


香月さんの課の人も5、6人がチームとして参加してくださっているのだが、


「(こ、これは…)」

一緒に来ていた瀬尾の前に丁度座った女性が、完全に奴に対して瞳がハートになっていた。


保城《ほうしろ》 紬《つむぎ》さんと言う、今回からサポート的立場で参加していると香月さんが紹介してくれた方だ。


小柄でクリクリの瞳や小さめの鼻、ピンクベージュのリップ、その全てが可愛らしい。

ふわふわのミディアムの髪をハーフアップに纏めて、白いブラウスに薄いピンクの膝丈スカートというとても清楚な服装の彼女は、スーツ姿の私とは全く違う。


なんか恥ずかしくなって来た。


それでも仕事が始まってしまえば、そちらに集中していたが私の心にはじわりじわりと、不安が影を落としていた。



打ち合わせ後、香月さんに呼ばれて話をしていると
「瀬尾さん」と可愛い声が近くで聞こえた。


「…枡川さん。今ぎくっとしたでしょ。」

今日も爽やかな装いの香月さんは、いつもと少し違うにやりとした微笑みで私を見る。


「…香月さんは先日から楽しそうですね…」

「ごめんごめん。央なら大丈夫だよ、多分。」

何の根拠も無さそうだが、恐らく私を元気づけようとしてくれているのだろう。

やっぱり香月さんは神様だ。

「…ありがとうございます。」

「(央は枡川さんに夢中だよって言ってあげたいけどね。)」



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