君と私で、恋になるまで
◽︎


そうして迎えた金曜日。

今日は無事に定時で上がれそうだ。


今週は瀬尾と、あまり話せなかった。

香月さんのところへ打ち合わせに行く時もみんなでいるから個人的に話はあまり出来ない。

“ただの同期“、その立ち位置の危うさを1番に実感しているのは私だ。



「枡川?何、なんか元気ねーじゃん!」

「…君はいつも元気そうだね。」

同じ営業の仕事をしている同期の古淵が、明るい声で話しかけてくる。


「当たり前じゃん!今日は泣く子も黙る華の金曜日よ?」

「…そ、そうだね…?」


その使い方あってるのか?とは思うがもはやルンルンで踊る古淵を前に私が何か言う隙は無い。
というかその元気も無い。


「今日、枡川はどっか行くの?」

「あー、うん、大学時代のみんなでね、飲み会があるんだ。」

「いいねー!どこ?」

「あー会社から近いよ。●●ってお店。」


「あ、知ってるそこ旨いよな。

俺の今日の予定はねー」


…こいつ、さては誰かに自分のことを聞いて欲しかったんだな。

もはや単純で分かりやすい古淵に笑いながら頷いて話の続きを待つと。


「何とあの瀬尾が!合コン組んでくれたんだよ!」

「……え、」



ガン、と頭を鈍器で殴られたような衝撃が走る。


「あ、枡川がリーダーの案件だよな?××って。そこの女の子と組んでくれたんだけど。」


きっと、保城さんだ。

綺麗にハーフアップされて毛先にパーマが当たったふわふわの髪の彼女の後ろ姿が脳内をよぎる。

その後も、古淵は丁寧に色々と今日の詳細を教えてくれていたが、私は全然頭に入ってこなかった。


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