君と私で、恋になるまで
“…今週俺、仕事つまってて、飲みに行くの厳しいかも。“
____嘘つき。
古淵との会話もそこそこに、私は帰る支度を済ませてエレベーターを待つ。
毎週行くって約束しているわけでも無いのに、律儀に予定を知らせてくれる瀬尾に、期待をすることもあった。
それが本当の予定かどうかなんて、疑ったこともなかった。
「馬鹿だな、私。」
所詮、同期なんてそんなものだ。
チン、といつもの音を鳴らすエレベーターが開いた時、私が今1番会いたくない奴がそこから出て来た。
「__枡川?」
「っ、」
今は、顔を見られたく無いのに。
「お、お疲れ様。また来週ね。」
言葉短くそう言って立ち去ろうとするのに、奴は素早く私の腕を掴む。
「どうした。」
「…何が。」
「明らかに変だけど。」
「…何でも無いよ。瀬尾も早く支度した方がいいんじゃない。古淵が待ってたよ。」
「…は?」
ここまで来て別にしらばっくれなくてもいいのに。
もうそこまで涙が出かかっていた私は、奴の腕を振払う。
「楽しんで、合コン。」
想像より低い声で言いながらエレベーターに乗り込み、閉まるボタンを素早く押した。