君と私で、恋になるまで





「____これ、連れて帰ってもいいですか?」



ぐい、と後ろから頭を掴まれた私は動作が止まる。



目の前のみんなも全員が呆気にとられた顔をしている。
顔を見なくたって、声だけでその人物が分かってしまう。



「あ、えっと…彼氏さん…?」

友人の1人が驚きの中やっと絞り出した質問に、

「ただの同期です。では、失礼します。」


爽やかな声でそう告げた男は、私の腕を引いて反対方向へ進んでいく。




「「…ただの同期って迎えにくんの…?」」


みんなの戸惑いの呟きは、聞こえなかった。









「瀬尾、ちょっと…!止まってってば…!」


先ほどまでふわふわといい気分だったのに、完全にそんなものは覚めてしまった。

この男は、可愛い女子たちと、うふふあははの合コン中では無かったのか。


そうして、やっと立ち止まった瀬尾はやはり気怠そうだった。

金曜の浮ついた街並みと聞こえる笑い声に削ぐわ無い沈黙を続ける私達。


「こんなところで何してるの…」

「何が?」

「今日、合コンだったんでしょう…?」

「そうだよ。」

「っ」

何なんだこの男!おちょくってるのか、と言いたくて睨むけど、男は気にしていないと言うようにいつものロートーンで言葉を続けた。


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