君と私で、恋になるまで
「じ、自分だってなんか知らんけど今週エレベーターで会った時怒ってたくせに。」
ボソリ、そう呟くと男は急に真剣な顔になった。
奥二重の瞳がギラリと熱を孕んで、私は動けない。
一歩私に近づいた瀬尾は、
「なんか未練がどうとか聞こえて、つい腹立って。」
「、」
やっぱりあの時の会話、聞こえてたんだ。
だけどどうして瀬尾が腹を立てるの。
ドキドキと心拍が早いリズムを立て始める。
期待、しちゃダメだ。
「…いたの?あの中に。」
「…え?」
「元彼。」
ボソリ、呟いた瀬尾は何だか拗ねる子供みたいだった。
「い、いなかった。仕事で来られなかったみたい。」
「ふーん。」
何それ。
エレベーターで元彼のいる飲み会に参加するかもって知って怒って。
今日はこうして迎えに来てくれて。
ねえ、瀬尾。
それは私、さすがに期待するんだけど、
どうしたらいいの?
「じゃあもうちょっと付き合ってよ、酔っ払いさん。」
なんてゆるり笑って、私の手を引くこの男の隣を、私譲りたく無いなあ。
この週末、亜子を誘って可愛いスカートでも買おう。
そう、決意した。