君と私で、恋になるまで
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俺たちの研修の最後を飾ったのは、都内から遠く離れた会社の所有する保養施設で宿泊しながらグループワークを行う、と言うものだった。
なぜわざわざ都会を離れてこんなコンビニも無いような場所で研修をさせられるのか意味が分からない。
「非日常、楽しくね?」
研修の間の休憩中にポッキーを渡しながらそう言ってくる古淵に、別に、と返して持ってきた本に目を落とす。
「何だよ瀬尾〜〜お前ちょっとここんとこ機嫌悪いだろ!」
頬を膨らましてそう言う古淵。
でもポッキーはくれるらしい。
こいつアホなくせに、そう言う感情に聡いのは何なんだ。流石に申し訳なくなってそれを手にしながら素直にごめん、と言うと
「お前は謝っても格好いいな」と言われた。何だそれ。
確かに、俺は少し苛立っているらしい。
その理由から、目を逸らしているだけだ。
少し外の空気でも吸おうと、研修の行われている部屋から抜け出して、自販機でコーヒーを買おうとしていた時。
「あ、瀬尾。」
後ろから、聞きたかったような、聞きたくなかったような、少し高い心地のいい声が耳に届く。