君と私で、恋になるまで
「…瀬尾、それ大事に飲んでよ。ラストだったわ。」
「あ、そーなん。ありがと。」
「軽。」
もういいやコーンポタージュにしよ、と口を尖らせて再び自販機に向き合う枡川。
「…代替案違いすぎだろ。」
「いいんだよ、私は今を生きる女だから。」
訳が分からない。
やはり口元が緩んでしまって、何でこいつとの会話っていつまでも続けていたくなる、そう言う気持ちになるんだろ、と長めの息をついた。
コーヒーの苦味が喉をゆっくりと潤していく。
買ってから「えー…やっぱコンポタじゃなかったかも」と呟く女に笑って、
「彼氏、元気?」
何だかその拍子に、胸の奥底にずっとあった蟠りのようなものを、俺は自然と吐き出してしまった。
__そして。
枡川の表情を見て、それに後悔したのはすぐだった。
購入したコーンポタージュを手にしていた彼女の顔が一瞬こわばったのを見逃さなかった。
何、その顔。
驚いて、俺は何か言わなければと口を開こうとした瞬間。
それを遮るように、彼女はくしゃりと笑う。
「まあね!」
「、」
俺が返事をする前に、休憩終わるよ、とやはり笑顔のまま枡川は少し小走りで部屋へと戻っていく。
今の笑顔は明らかにいつもと違った。
でも、それを指摘できるような立場でも無い。
そもそも別に、彼氏のことなんてわざわざ話したく無いのかもしれない。
それはそれでモヤつきが止まりそうに無い自分の胸に気がついて、舌打ちをした。