君と私で、恋になるまで
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「田舎ならではの綺麗な空気が見せてくれる星を鑑賞しようぜ!」
そんな風に、急に突拍子もないアホなことを言うのは古淵しかいない。
宿泊研修の最終日。
無事に終えられた開放感から、みんなで夜は飲もう、と言う雰囲気ではあったが、古淵の謎の提案に一同は一瞬固まった。
しかし、開放感に突き動かされたテンションは止まることを知らない。
いいじゃん!観に行くか!なんて口々にそう言ってゾロゾロと外へ向かう。
「……古淵、俺パス「しない!行くんですよ央くん!!」
俺の返事を分かりきっていた古淵がそう至近距離で凄んでくるから、半ば諦めたように俺も溜息と共に外へ向かった。
すると目の前には、俺が勝手に同族嫌悪している島谷が1人で歩いていた。
「…枡川は?」
この女は、枡川と仲が良いはず。
見渡したところ居なさそうだと、声をかけてしまった俺は、本当にあいつと関わりたくないと思っているのか。
俺の急な声かけに、少し驚いたように振り向いた島谷は、2、3度目を瞬いてそれからゆっくり唇に笑みを乗せる。
やっぱりこいつ、同じニオイがして俺の何かが「警戒しろ」って言ってる気がする。
「…気になる?」
「別に、聞いただけ。」
試すようなその口調に乗るつもりの無い俺はそう答えて、先を行こうとする。
「…彼氏と電話よ。」
まじで聞かなければよかった。
__だけど。
何となく、枡川の“あの時“の笑顔を思い出してしまった。