君と私で、恋になるまで





「……あいつ、彼氏となんかあんの?」

「…何で?」

「別に。順調ならそれで良い。」


こいつに聞くことでも無い、そもそも関係がない。

そう思い直して、歩みを進めようとする俺を島谷は呼び止めた。


「……泣いてるかもしれない。
“私が“ちょっと様子見に行こうとしてたけど、どうする?」

やっぱりこいつの試すような聞き方、腹たつ。

だけど、島谷の最初の言葉は、もう流せそうになかった。



「…俺が行く。」

何かを考える前に、言葉が先に出てしまっていた。


目の前の女は間髪入れずそう言った俺の言葉にやはり面白そうに瞳を細めた。



「まあ、ちひろの作り笑いに気付けるんなら良いか。
ぜーんぜん面白くは無いけど。ヘタレそうだし。」


「…すごい失礼なこと言われてるよな俺。」


何でこいつにこんなこと言われなきゃいけないんだと表情に思わず険しさを増す。

でも、もうそんなことかまってられなかった。



俺に、関係ない。

___だけど。

あのいつも全開で笑うあいつが泣いてるかもしれない。
それは嫌だって思ってしまった。




「…ロビー見てみたら?」

そう愉快に告げて、みんなの元へと歩いていく島谷にはいろいろ見透かされてそうで面倒だけど。


俺はすぐに、走って来た道を戻った。


古淵の言う通りあまりに綺麗に夜空に降る星さえ、そんなこと今は全く気にしていられなかった。



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