君と私で、恋になるまで
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「…瀬尾?」

「ん?」

「どうしたの、間抜けな顔してたよ。」

「…枡川に言われたらいよいよ泣けてくるな。」

「泣けば良いんじゃないかな?」


何なんだ!と若干不満そうに言いながら、梅水晶の入った小鉢を手にする枡川に口角を上げる。




あれからもう、3年だ。

デートに選んだらきっと嫌がる人も多いんじゃ無いかって思うようなサラリーマンばかりが集うこの居酒屋を俺が最初に教えた時、枡川は目をキラキラと輝かせていた。


そういうところも可愛くて堪らないくせに、俺は本当に笑えるくらいこの目の前の女への気持ちを持て余している。


1番最初に飲んだ時、酒が進んで少しして「恋愛は難しいね」それだけポツリと呟いた少し寂しそうな顔が強く焼き付いている。


詳しくは聞かなかったが、彼氏と別れたのだとそこではっきり知った。

こいつが、いつもの屈託の無い顔で笑えるように。


それだけを考えるようになったら、3年経ってた。
まじで笑えない。


だけど、きっと傷ついていた枡川に、強引に恋愛の話を迫ることも出来ずにいた。
というのは勿論嘘じゃないけど、同期の枠を越えることに臆病になっているのは何も反論が出来ない。


そろそろ島谷あたりが痺れを切らして殴りかかって来そうだ。

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