君と私で、恋になるまで
「あれ!?15時からでしたよね?!」
「すいません、少し早くついてしまったようで。」
会議室を出てエントランスまで見送ってくれた香月さんは、その側のソファに腰掛ける男性に驚いたようにそう声をかけた。
どうやら次のアポイントのお客様のようだ。
相変わらず香月さんは忙しいな。
「香月さん。私ここで大丈夫ですよ。」
「いえいえそういうわけには…」
いつも丁寧にエレベーターまで見送ってくれる香月さんにそう伝えるけど律儀な彼は首を縦には振らない。
どうしたものかと困ったように笑った私に、
「では私が、下までお見送りさせていただきます。」
隣にいた保城さんが愛らしい声でそう告げた。
……下まで?
◽︎
非常に、気まずい。
なんと保城さんはエレベーターまででは無く、一階のロビーまで見送ると一緒に乗り込んでしまった。
2人きりで密室の箱に入っているこの状況を全く想定していなかった。妙に緊張して強張る身体を宥める方法もよく分からない。
「…す、すいませんなんだか見送っていただいて。」
「いえ、私も枡川さんにお聞きしたいことがあって。」
「…え?」
「プライベートなことで仕事全然関係無いんですけど。
…瀬尾さんって彼女いますか?」
「え、」
エレベーターのボタンの前に立つ彼女は、そう言って後ろにいた私を振り返る。