君と私で、恋になるまで
すると保城さんは、1つゆっくりと息を吐き出して、私をくりくりの瞳で射抜く。
「焦ってます。
そんな人が私の恋のライバルなんですから。
…ですよね?」
「、」
どうやら彼女に私の気持ちはバレバレのようだ。
何も言えず、ただ視線を合わせるだけの私に、
「…もっと格好よく宣戦布告とかできれば良かったんですけど。
"負けないですから"、みたいな女子トイレとかでよくあるやつ。」
「え……」
確かにそういうドラマはよくありそうだけど。
戸惑う私に、ふ、と困り顔のまま笑った彼女は言葉を繋げる。
「でも、私、自信があるわけでは無いので。
好きになってからの時間短いですし、ずっと同期で居られて仲が良くて、余裕もある枡川さんとはスタートから違いますし。
だからこそ必死ですよ。
出来る限り可愛く見られたいです。
そりゃそうです、私、あの人が欲しいんですもん。」
「保城さん、」
彼女の言葉は率直で、嘘がなくて、眩し過ぎて思わず逃げたくなってしまう。
「お時間割いてごめんなさい。
今後ともよろしくお願いします。」
深々とお辞儀する彼女に、こちらこそ、そう掠れた声で告げて返すので精一杯だった。