君と私で、恋になるまで
そして今日は、香月さんの所へリニューアル後のイメージをチームで発表する予定の日だ。
偶然にも他のみんなは現場や外回りが重なって直行する中、私と瀬尾はオフィスから向かうことになったわけだけど。
香月さんの会社は、実は自社から2駅分くらいの距離なので私はいつも歩いて向かっている。
車を使う距離でも無いし、電車だと逆に乗り換えが発生して少し面倒なのでそれがお決まりだったのだが。
確かに今日の日差しはあまりに強くて、体力を奪っていく陽気ではあるけど。
「はーーー、暑い。」
「歩くの遅いと余計この日差し浴びる時間増えるでしょ!?」
ラスボスのように現れた登り坂に辿り着いた時点で瀬尾の心は折れたらしい。
それでも雰囲気が気怠い男は、歪んだ表情ではあるけど涼しい出で立ちのままだ。こちらは化粧もろとも流れていきそうだというのに、この男のメカニズムが分からない。
「あ、枡川、コンビニ寄ろ。ガリガリ君買お。」
「中学生なの?」
ほら行くよ、そう男の言葉を流してまた足を進めようとするといつものロートーンボイスが枡川、とまた私を呼ぶ。
それだけで無事に心は跳ねるし、まず2人きりで居る時点でもう既に心拍は騒がしいし、簡単に後ろを振り向いてしまう私は、このよく掴めない男に勝てないままだ。
「今日直帰する?」
「あー、時間的にそうだね。」
「俺もなんだけど。」
「そうなんだ。」
「…今日のこの暑さは、ビアガーデン行ってみたくならない?」
「!!!!」
突然の提案に言葉無く、でも反射的に奴の顔を凝視してしまった。