君と私で、恋になるまで
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「では、本日は以上です。
次回の日程については、香月さん、この後少しお時間よろしいですか。」
「はい、承知しました。」
ありがとうございました、向かい合ったチームのメンバー同士がそう挨拶を口々に告げて、無事に今日の打ち合わせが終了した。
「お疲れ様です。」
「お疲れ様です!ありがとうございました。」
「こちらこそ。なんかいよいよ大詰めって感じで楽しみですね。」
柔らかい微笑みと共にそう言って下さる香月さんは
今日も神様のように御光が見える。
「引き続きよろしくお願いします。
あ、それで次回の日程なんですが、」
そう言いながら手帳を開こうとした瞬間、
「瀬尾さん、このまま少し打ち合わせお願いできますか?」
そんな可愛らしい声が意図せずとも聞こえてしまう。
視界の端で、まだうちのメンバーと香月さんのチームメンバーが雑談を交わす中、会議室を出て行く保城さんと瀬尾が見えてしまった。
「…枡川さん、」
「あ、すいません…!
次回は、施工や搬入に関する最終打ち合わせですね。
えっと来週だと水曜日以降のご予定いかがですか?」
「木曜でしたら終日空いてます。14時くらいでいかがですか。」
「承知しました!よろしくお願いします。」
雑に予定を書き留めながら、笑ってそう言うと、何やら香月さんは複雑そうな表情だった。
「…香月さん?」
「すいません。うちの保城が無理言って。」
困った笑顔でそう言う彼が、先日のアドバイザーの件を指しているのだとすぐにわかった。
「いえ、私が謝られることでは無いですよ…!
それに瀬尾も、自分が担当した案件のその後にも関われるのは嬉しいと思います。」
「偉いですね枡川さんは。」
「え?」
「瀬尾は私のなので奪らないで下さい、って俺だったら言っちゃうかもな。」
「!?」
彼のらしくない発言に、最大限に瞳を見開いてしまった。
「…わ、私のではないですよ…残念ながら。」
最後は消え入りながら本心を伝えるとやはり彼は笑みを濃くする。
「それ、央にそのまま言えばいいのに。」
「…言えたら、良いんですけどね。」
"ちひろ、良いの?"
眉を下げてそんな風に伝えるしかない自分の中で、亜子の言葉が反芻されていた。