君と私で、恋になるまで
全体でのミーティングの後、会議室を出ると瀬尾は保城さんとオープンスペースで再び打ち合わせをしていた。
それを確認して、すぐに視線は晒したけれど胸が嫌に騒つくのは気のせいでは無くて。
溜息が1つ、誰に気づかれるでも無く意図せず落ちてこぼれた。
ビアガーデンに行くまで、私は何処で待機するのが良いのだろうと思案していた時、うちのチームメンバーの先輩が勢いよく話しかけてくる。
「枡川!お前直帰?」
「……あ、はい。」
「よし、行くぞ決起集会。」
「エ?」
「え?じゃねえわ、お前、前のやつ残業で来なかっただろ。」
"前"というのは、私が香月さんとの噂のことでリーダーを辞めるべきかとオフィスで悩んでいた時だ。
あの時、瀬尾は何か私の異変に気付いたのか会いに来てくれた。
そういう優しさに触れる度に降り積もる気持ちを、私は1人で持て余し続けている。
「おい、聞いてる?」
「は、ごめんなさい。えっと、今日なんですが、」
「折角だから、香月さん達も誘って合同でしようぜ。」
予期せぬ提案に、私は再びエ、と声を出す。
「それは、またちゃんと企画すべきやつでは…?」
「正式なのは今度な。今日はその予行練習的な?」
的な?ってなんだろうか。
香月さん達も巻き込んでしまえば、それは私のプライベートで断れる問題では無くなる。
なんて答えればいいのか迷っていた時、
「何か楽しそうですね。」
愛らしい声がすぐ側で聞こえてきた。
どうやら瀬尾との打ち合わせを終えたらしい。
微笑む保城さんの後ろには、相変わらずの気怠さを纏った瀬尾がいる。