君と私で、恋になるまで




私の前に立つ瀬尾を見上げて、言葉を紡ぎかけた時、


「おーい、今日この近くのビアガーデンで良い?」

「凄いお洒落な所があるんです!」

先輩と保城さんがそう私達に話しかける。



…こんな偶然あるのだろうか。


「どんな偶然だよ」と隣で同じ感想を漏らした瀬尾と再び視線が絡む。


「よかったな。」

ゆるく微笑む男に、もう私は言葉を仕舞い込んで微笑み返すしか無かった。




◻︎


「……というわけです。」

「成る程…(央、お気の毒。)」


香月さんには私の気持ちもバレているので、今日本当は予定していたことも含めて洗いざらい全てを話した。


結局、うちと香月さんのチームメンバー合わせて7人という急にしてはそれなりの大所帯で、最近オープンしたばかりの商業施設の屋上にあるビアガーデンにやってきた。

人工芝で整備されたその場所にあるテーブルも椅子もアジアンテイストにまとめられた、電飾が至るところに施されている、まさに"お洒落空間"。

メニューを見たってドリンク1つ取っても、名前からして洒落すぎていてよく分からなくて、「…ハイボールのようなものはどれですか。」と聞いてしまった。
恥ずかしすぎる。

メニューですぐに選べてしまう瀬尾は、確かにこういう場所にも慣れているのかな。

そう、端の方で保城さんと話す男を見て思う。



「保城は、完全に央の隣キープですね。」

ポツリと呟く香月さんに、私は曖昧に笑うしかできない。


彼女は私に、必死です、と真っ直ぐ伝えた。


「……私も、ですよ。」

「枡川さん?」


ふとこぼれた言葉に自分でも驚いて、いえ、と香月さんに笑って、空いてるお皿をスタッフさんに手渡していた時。


____プルルルル、

勢いよく社用携帯が着信を知らせた。




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