君と私で、恋になるまで
先日、彼女に言われた言葉が脳内を巡る。
"ずっと同期で居られて仲が良くて、余裕もある枡川さんとはスタートから違いますし。"
「……保城さん。私、あの男と同期で居られるのは、もちろん誇りです。」
「……、」
「どんなに忙しくても、いつもの調子で隠して、だけど本当は限界まで頑張って良いものをつくろうとする。
その姿勢を見てきて、学ぶことも沢山あります。」
気怠いあの男の仕事ぶりは、同じチームになったらより一層間近で見えて、それは私の気持ちを当たり前のように加速させた。
「だけど私、余裕なんかこれっぽっちも無いです。」
「…え?」
「……"同期の枠"からなんとか抜け出さないとって毎日思って、焦ってます。
____瀬尾が、好き、ですから。」
初めて、あの男への気持ちを誰かに吐き出した。
「好き」と口に出したら、前からそんなこと自覚はしていた筈なのに、胸は高く鳴り響いた気がした。
「………これは所謂、女子トイレの宣戦布告というやつですか?」
ふと微笑んで、そんな風にこちらを窺う保城さんに私も釣られて笑う。
「宣戦布告というよりは、自分自身への宣言に近いかもしれません…、」
臆病で、ヘタレで、同期の立場で彷徨う自分。
本当はもっと、あの男に近付きたい。
ずっとそう思っている。