君と私で、恋になるまで




「あと、とても嬉しかったです。」

「?」

「先日、"商談が丁寧だ"と言って下さって。

プロジェクトはこれから佳境です。
私も、引き続き全力で取り組ませていただきます。

どうぞよろしくお願いします。」


保城さんのように、全てに気を遣った可愛らしい女の子になれたら良いとは思うけど、今更きっと私には難しい。同じ部分で対抗はできそうに無い。


だけど、そんな彼女が、"今の私"を見て、仕事に対する姿勢を褒めてくれた。


あの時は保城さんの勢いに押されてちゃんと反応が出来なかったけれど。


その部分なら、もっと頑張れるかな。

___あの男にも、認めてもらえるくらいに。




「………え、私たち今、仕事の話してましたっけ。」

「…ほんとですね、すり替えてしまいました。」


「もーーー、枡川さん相手だとどうしてもドロドロした女の争い、みたいな感じにならないなあ。

まあ別にしたいわけじゃ無いですけど。」


そう言ってちょっと呆れて、だけどクスクス楽しそうに笑う保城さんはやっぱりとても可愛いらしい。



このライバルは、相当手強い。


私はそう実感しながら、目の前の彼女に微笑む。

そして、まず今日出来ることをするために一礼して今度こそエレベーターへ足早に向かった。






「……だから。本当は笑うとめちゃめちゃ可愛いし愛想も良いなんて、ギャップでしか無いんですよ。

なんであの人、仕事で褒めたとこしか覚えてないの。」


困ったようにそう呟いて、溜息と共に微笑する保城さんの言葉は勿論聞こえていない。



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