極悪聖女
何も言わなくても、傍にいてくれる。
私にはお爺さんがいる。だけど、ずっとじゃない。
お爺さんは、お爺さんだから。
いつか私を遺して逝ってしまう。
その前に私を見棄て、唾を吐きかけ、石を投げてくるかもしれない。
「……っ」
嫌な事を考えてしまった。
私はお茶をごくごく飲んだ。飲み干すと、お爺さんが黙って注いでくれる。
ほんの数分だった。
吹き荒れた嵐が、収まった。
お爺さんは家だけでなく、私の心も、ちょこちょこと修繕してしまうのだ。
私はまた、微笑むことができた。
なのに。
「────」
森の外に気配を感じる。
また魔女になった私に会うため、誰かやって来たのだ。
ああ、ほんと……笑っちゃう。