極悪聖女
4 癒えない傷跡
「フ、フレヤ様……っ、どうか……私と共に来て国境を守ってください……!」
「どなた?」
「!」
ズタボロな姿で跪くイルヴァは、汚れた顔で驚きを表す。
「フレヤ様……ッ!」
「ええ、私はフレヤ。あなたは?」
もちろん、知っている。
城下町の酒屋で、新鮮で素朴な頑張り屋の聖女だと日夜アピールしていた。
それに勇者のアバンが引っかかり、骨抜きにされた。
そしてパーティーに入ってきて、私を追い出した。
「……イルヴァです」
悔しいの?
恐いの?
イルヴァは真っ青になって震えている。
「そう。で、何の用?」
「あ……アバン様の使いで参りました。現在、東の国境は魔物と山賊に蹂躙され、悲惨な状況です」
「ではなぜ後方支援すべきあなたがここに? 恰好からして、聖女でしょ?」
「わ、私は……まだ新米で、その……お役に立てないので……」