極悪聖女
5 青春は遥か彼方
「ぐふあっ!」
「……」
偽の書状を持って来たイルヴァに、鉄槌を食らわせた。
新調した杖をひったくって、全力でスイング。
どさり。
ズタボロで傷だらけの未熟な聖女が、仰向けに倒れる。
彼女の体の上に杖を放り、全回復させた。
「……っ」
「あんた知らないのね。王宮に入った事あるの? 私が殿下の文字を忘れたとでも?」
「クソ女」
「──なんて言った?」
傷の痛みがなくなって跳ね起きたイルヴァが、偽の書状を千切って捨てた。
「そんな性悪だから王子に棄てられるんでしょ。アバンからも」
「二股をかけたのはあちら。色に溺れてリーダーの務めを忘れたのは、そちら」
「魅力がないからそっぽ向かれるのよ!」
それが捨て台詞?
「あ、そう。やられるほうに責任があるのね」
「そうよ!」
「魔族に負ける弱い国なんて滅びればいいわ」
大地の精霊に力を借りて、イルヴァを持ち上げて結界の外まで吹っ飛ばした。