極悪聖女
額に手をかざして眺め、踵を返す。


「その元気を修行に回せば、自分の回復くらいできるっていうのに」


腹立たしい。
呆れる。

見た目の美しさばかり気を取られて、仲間や民や兵士というあらゆる男からちやほやされたがる、志のない新米が増えた。私はかつて、それを嘆いた。そして祈り、信じたけれど。
ご覧の通り。


「怪我はないかい?」


家に戻ると、お爺さんが心配してくれた。
夕方のお茶の時間を邪魔されて、とても嫌な気分。
イルヴァさえ来なければ、お爺さんと湖にカモの赤ちゃんが泳いでいた話で楽しく過ごせていたのに。


「大丈夫よ。ごめんなさい、お茶、冷めちゃったでしょ?」

「ああ、ぬるいのもまた美味しい」


そう言いながら、お爺さんがやかんを火にかけた。
椅子に座って、冷めたお茶を呑んで、焼き菓子を口に放り込む。


「最近は若い子が来るから、賑やかだね」

「お爺さんも若い子が好き?」


頬杖をついて不貞腐れると、やかんに体を向けたままお爺さんがふり向いて首を振った。
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