極悪聖女
「いいや。気の毒には思うが、フレヤを傷つけるような子は好きになれない」
「そうでしょう」
「でも、あまり虐めちゃいけないよ」
お爺さんがやかんに向いた。
私はお爺さんの背中を眺めていて、お爺さんもそれがわかっているようだった。
「年をとってわかったのは、2種類の人間がいるという事だ。人を傷つけて喜ぶ心の持ち主と、人を傷つけて悲しくなる心の持ち主。フレヤは、喧嘩のあといつも悲しい顔をしているからね」
「お爺さんは若い頃どうしてたの?」
お爺さんとの楽しい時間を穢されたくない。
この家に戻ってきさえすれば、安らぎがある。
お爺さんがいてくれさえすれば、私は悲しくなんてない。
「いろいろあったよ」