極悪聖女
「……」
その主張で私の心を動かせると、本気で思っているの?
「砦の結界を再構築してくれ。それから救援隊の編成と派遣。そのあとは」
「ちょっと黙ってくれる!?」
指を突き立てて怒鳴ると、フィリップ王子は口を噤んだ。
「フレヤ……!」
と思ったら、縋ってきた。
払い除けるより先にスカートを握られて、悍ましさに身が凍った。
気持ち悪い男。
「愛している、フレヤ。俺のところへ戻ってきてくれ。一緒に国を救おう!」
「……殿下」
「お前も愛しているだろう!? 返事をしてくれ、フレヤ!」
そうか、英雄になりたいのだ。
そんな器ではないのに。
かつてはこの男を尊敬し、崇め、信頼していた。恋は盲目とは、真理だ。
そしてフィリップ王子の愛は、軽い。