極悪聖女
要らない苦労をかけてしまって、心苦しい。
「フレヤは……暴れる小鹿みたいだった」
「ぐ」
なんとなく恥ずかしい。
「それで……ああ、そうだ。確か、こう聞いたんだ。『お嬢ちゃん、お名前は?』……そうしたらフレヤは泣きながら怒鳴ったんだ。『フレヤよッ! 文句あんのッ!?』……ってね」
「……」
思い出して、とても嬉しそうな微笑みを浮かべるお爺さんは、可愛い。
ただ私は、かなり恥ずかしくて言葉を失った。
お爺さんがふぉっふぉっふぉっと笑う。
「そうだそうだ。それから、ものすごい剣幕で『お爺さんッ、この辺に空き家はないのッ!?』と言うから、ここに連れて来たんだ。そうしたら『ありがとう、ちょっとどいてっ!』と言って、ふしぎな杖でボロ家をきれいにしたんだよ。ああ、忘れてた。あんなに感動したのに、これだから年寄りは困るな」
回想に浸るお爺さんは幸せそうだ。