極悪聖女


「今度はなんだい?」

「いえ……」


お爺さんはきっとすぐ死んじゃうだろうなと思ったら悲しくなったの。
なんて言えない。
本人を前にして。


「ああ、そうか。呆けが進んだらフレヤを忘れてしまうかもしれないって、そう思ったんだね。大丈夫だよ、フレヤ。こんなに可愛いフレヤを忘れるわけないじゃないか」

「……ええ」


その、もう一歩先を考えたのだけど。
 

「もういいわ。変な事ばかり言ってごめんなさい。もっと楽しいお喋りしましょ!」

「うん?」


私は話題を変えた。


「この間、マスを釣ってきてくれたでしょう? バターソテーにして食べたの。とっても美味しかったわ。お爺さんはいつもマスをどうやって調理してるの?」

「はて。マス……」

「……」


忘れてる!
短期記憶が確実に、キテる!!
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