極悪聖女
私はしゅんとしてしまった。
駄目だ。お爺さんはやっぱり、お爺さんなんだ。
「……」
私を残して遠くへ行って、その次には私を遺して天国に逝ってしまう。
そしてそれは、そんなに先の事ではない。
ずーっと一緒には、いられない。
「お爺さん、私……もっと早くに知り合いたかった」
「ははははっ! 今でもこんなに可愛いんだから、小さい頃はもっと可愛かっただろうなぁ」
「そこまで早くって意味じゃない」
「おう?」
例えば、フィリップ王子が二股をかけ始めた頃。
例えば、アバンが酒場でイルヴァに鼻の下を伸ばしてた頃。
魔女と呼ばれ始めた頃。
石をぶつけられながら王宮を去った頃。
「……」
あの、生きてるのが虚しくて、みんなが憎くて仕方なかったあの頃。
あんな時間は、要らなかった。
あの時間をお爺さんと楽しく過ごせていたら、どんなに幸せだったか。