極悪聖女

国を背負う聖女は、やりがいがあった。
だけど、何も残らなかった。


「また、悲しくなってしまったのかい? 言ってごらん?」

「……お爺さんは私を置いて行くわ」


言ってしまった。

ほら、やっぱり。
負の感情に支配されると、やっちゃいけない事をしてしまう。
後悔するに決まってるのに。


「ああ、いつかはね」


お爺さんは穏やかに請け負って、頷いた。
 

「だから毎日こうして会いに来るんだよ」

「お爺さん……」

「残された時間を、幸せに過ごしたいからね。フレヤ。いつもありがとう」


優しいお爺さんの言葉に涙が出てきた。
目尻を拭きながら、私は俯いた。


「私、何もしてないわ。いつもしてもらってばかりで……っ」

「そんな事ないんだよ、フレヤ。今はわからなくても、フレヤは幸せをくれた」


お爺さんは本当に、いつも優しい。
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