極悪聖女
「ありがとう、フレヤ。だけど、大丈夫だよ。生きていればきっと、大切な相手に巡り合える。寂しい年月が短くても、長くても、一緒なんだ。その人に会えば、フレヤは幸せになる」
「そんなこと言わないでッ」
お爺さんの指からサッと手を引いて、テーブルを叩いていた。
「一緒にいたいわ……私は、お爺さんと一緒にいたいのよ……ッ!」
「フレヤ……」
困ったなぁ、という顔をしている。
だけど、そのどこまでも深い優しさに、ますます胸が痛む。
「……」
一瞬、ある考えが過った。
私はずっと、国を、民を、守ろうとしてきた。
それは脅威からや、今ある暮らしを、穏やかに過ごせるように。
だけど今、誰もが、大切な人を喪わないか、恐怖のどん底を味わっている。
砦が落ちて、魔族が流れ込んで、兵士は戦場で命を削っている。
街を守る兵士が減って、山賊や野生動物、魔族に怯えならが、民は凌いでいる。
「……っ」