極悪聖女
「おかえりなさい」
「ただいま、母さん! 見て! 僕、こんなにキノコ採ったよ!!」
「まあ、ナハラ! 凄いじゃない! 見せて?」
「お父さん、おかえりなさい!」
「おかえりなたい!」
長男のナハラがカゴいっぱいにキノコを盛って駆けてくる。入れ違いに、長女のラフィーアと次男で末っ子のズィヤードがカイスに駆け寄った。
ラフィーアとズィヤードを左右の腕にぶら下げて、カイスは朗らかに笑っている。
「いい子にしてたか? お母さんの言う事、ちゃんと聞いた?」
「私はふきんを畳んで、これから料理を手伝うの!」
「ぼく、おさら! みんなのっ!」
そうだ、ズィヤードの持ってたお皿。
「あっ」
ラフィーアが声をあげた。ズィヤードは自分の手からお皿が落ちた事も気づかないで、カイスの腕でプラプラ遊んでいる。
ナハラがさっと右手を向けた。床で砕ける前に速度をゆるめ、お皿はゆっくりと床に着地した。