極悪聖女
保身に走るのは、昔も今も同じ。
「私の事を魔女だって大臣が議会で言ったら、議事録に残るじゃない。なんで忘れちゃったの? あんたが言ったんでしょ?」
「フレヤ様……それは……!」
「あれで私、追放されちゃったんだけど」
「そ、そ、その事については、深くっ、反省している所存でして……ッ」
「知らない。私、もう関係ないし」
背を向けて右足を踏み出すと、左足首をガッと掴まれた。
「……」
触った。
汚い手で、私に触りやがった。
「お待ちください! なんとしても、あなた様のポストを用意しますッ! だから、どうか、もう一度、砦の結界を……どうかッ!」
「……」
肩越しに見下ろす大臣の太った背中が、とても惨めだ。
「あんた誰? 消えて」