ずっと一緒に旅をしていたオオカミが魔王だった件
「ついに追い詰めたわよ魔王! 観念しなさい!」
そう勢いよく剣を構え、勇者ノヴァは玉座の間へと踏み込んだ。
彼女を乗せて走れそうなほどの巨体の黒狼を従え、翡翠色の瞳に炎を燃やし、高い位置で結った黄金の髪をなびかせる姿は、勇者と言うよりは美を司る愛の女神のようである。
しかし、そんな凛とした勇者の表情はすぐに間の抜けたものに変わる。
「誰も、いない……?」
言葉通り、扉から続く緋色の絨毯の先の玉座には誰も座っていなかった。
それどころか城の外に溢れていた魔物の気配すらしない。
「どういうことブライト? ここに魔王が住んでるんじゃなかったの?!」
ゆらり。
振り返った視線の先で、黒狼の輪郭が陽炎の如く揺れる。
短く艶やかな黒髪。月夜を思わせる銀の瞳。黒の甲冑とマントを纏った野性的な長身の美丈夫。
驚き動けないノヴァの顎に手をかけ、獣の面影を残した男はニヤリと笑った。
「これからお前と住む予定だから、嘘は言ってねぇな?」
犬歯を覗かせ唇を歪ませるその顔は、旅の中で何度も対峙してきた────
「んなっ魔王ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっ?!」
そう勢いよく剣を構え、勇者ノヴァは玉座の間へと踏み込んだ。
彼女を乗せて走れそうなほどの巨体の黒狼を従え、翡翠色の瞳に炎を燃やし、高い位置で結った黄金の髪をなびかせる姿は、勇者と言うよりは美を司る愛の女神のようである。
しかし、そんな凛とした勇者の表情はすぐに間の抜けたものに変わる。
「誰も、いない……?」
言葉通り、扉から続く緋色の絨毯の先の玉座には誰も座っていなかった。
それどころか城の外に溢れていた魔物の気配すらしない。
「どういうことブライト? ここに魔王が住んでるんじゃなかったの?!」
ゆらり。
振り返った視線の先で、黒狼の輪郭が陽炎の如く揺れる。
短く艶やかな黒髪。月夜を思わせる銀の瞳。黒の甲冑とマントを纏った野性的な長身の美丈夫。
驚き動けないノヴァの顎に手をかけ、獣の面影を残した男はニヤリと笑った。
「これからお前と住む予定だから、嘘は言ってねぇな?」
犬歯を覗かせ唇を歪ませるその顔は、旅の中で何度も対峙してきた────
「んなっ魔王ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっ?!」
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