ずっと一緒に旅をしていたオオカミが魔王だった件
 腹筋を使った絶叫に魔王が耳に指を入れて眉間に皺を寄せる。

「耳元で叫ぶな。ホント見た目と中身に差が有りすぎる女だな」

「うっさいわアホぉぁぉっ! 勇者として村を出るまで性格が残念すぎるボーバルさんちの美少女ノヴァちゃんって18年間呼ばれてた話はやめろぉぉぉぉぉぉぉっっ!!」

「ボーバルさんちの話はしてねぇよ落ち着けよ」

「この状況で落ち着いていられるわけないでしょ! 私の可愛いもふもふブライトはどこ行ったあぁぁぁぁっ?!」

「だから俺がブライトだろ。見てただろ」

「嘘だああああああっ?!」

 錯乱し叫び続けるノヴァにブライトが舌打ちする。

「だから、少しは黙れよっ」

 グイッと再び強引に顎を掴まれ、首が痛くなるほど上を向かせられる。
 重なった乾いた感触を振りきろうとしても、二回りは違う体格差がそれを許さない。

 肉厚で長い舌に唇をつつかれ息苦しさに喘いだところを絡めとられてしまう。いつだってこの男は、ノヴァの隙を見逃さない。

「……つーかこんだけ何度も触れておいて、この瞳を間近で見ておいて俺がブライトだって気づかない方がおかしいだろ。声だって似てると思わなかったのか」

 酸欠の思考に熱い吐息で囁かれて甘い熱が疼く。

「あーもうトロトロじゃねぇか。そんな表情しやがって。さっさっとベッド行くぞ」

 この世界を掌握するほど強大な魔力を持った魔王は、力の抜けたノヴァを抱き無詠唱で転移した。

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