ずっと一緒に旅をしていたオオカミが魔王だった件
「───え?」
 どういうこと?
 私が魔物を弾き飛ばした?
 光の勇者って、なに?

 混乱するノヴァに領主の使いたちが叫ぶ。
「娘! お前はあの魔族たちに対抗する力を持っているのか?!」
「ならば今すぐに王都に向かってくれ!」
「そうだ! 国王様が危ない!」
「城が魔物に占拠されてしまったら我々の生活が!」
 結局お前らそれかよ自分のことかよ。

「えー私これでも畑に種蒔いたりしなきゃいけなくて忙しいんでぇ」
「そこをなんとか!」
「いや、でもぉ」
「このタンポポあげるから!」
「いらないですぅ」
「このっ下手に出れば調子に乗りやがって!」

 のらりくらりと王都行きをかわそうとするノヴァに一番傷の浅い男が掴みかかろうとしたその瞬間──黒い影がノヴァを庇うように立ちはだかった。

『この娘に触れるな』


 それが、人語を話す黒狼ブライトだった。
 
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