きみに、恋う
おしまい、恋煩い
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人はいつだって素直になりなさいというけれど、
世の中はそんなに簡単じゃないし、甘くもない。
「なんかやり残したことある?」
いつも通りのスカート丈でいれるのも、廊下に並ぶ40分後までだ。
今日くらいは先生のことを困らせないであげよっか、クラスの女の子たちとの約束は絶対に守らなくちゃいけない。
最後、の日だから。
いつも通りスクールバッグを肩にかけて、いつも通り3年間登下校を共にしたサユとミノといつも通りの電車に乗って、いつも通りの時間に最寄り駅につく。
駅にはおんなじ制服の、おんなじ学年の子たちが当たり前のようにおんなじ方向に向かっていく。
今日が卒業式だなんてこと、あんまり実感がわかない。
「あんちゃんは、あるでしょ?」
「え、なんかあったっけ?」
ふたりの間に挟まって視線が集まるけれど、ちっともやり残したことが思い浮かばない。
やり残したことがないんじゃなくて、
花の女子高生というブランドをもう惜しまなきゃいけないというのが少しかなしい。
もっと制服を着ていたかったし、1年生のころからもっとばっちりメイクしておけばよかったとも思うし、修学旅行にはもう一回行きたいし、屋上にも行ってみたかったし、授業さぼってみんなで教室を抜け出しても見たかったし、黒板けしをドアに挟んで先生にドッキリを仕掛ける古典的なあれもやってみたかった。
考え出したらキリがない。
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