きみに、恋う



「あ、れ、でしょーが!」

「あれ?」

「あれよ、あれ!ほらこの指の先にいるでしょうが」

「いるってなにが──」

「あんたの因縁、篠崎七星に決まってるでしょ」

「は、はあ?」



サユの指さすほうに視線をたどれば、5人のまとまった集団で朝からまあ元気に大きな声で笑ってるクラスメイト、そのなかの右から二番目にいるそんなに背の高くない男。

心臓が嫌な音を立てて、表情が一気に険しくなるのが自分でもわかった。



「あんたたちは、最後までこの状態で言いわけ?」

「…なに、この状態って」

「顔を合わせばいがみ合うし、お互いマジで無理!みたいな態度とってんのがもうもどかしいのよ、こっちからしたら」

「いい加減に好きだって認めないと後で絶対後悔するんだから」

「やめてよ、無理無理、ありえない」




篠崎七星はわたしのことが嫌いである。


顔はよくもわるくも塩顔で、ちょっと釣り目。クールそうに見えるけれど全然そんなんじゃないし、口から出てくるのは馬鹿、アホ、だっさ、きも。
いつだってわたしに意地悪ばっか仕掛けてくるし、それがムカつくからわたしだっておんなじ語彙力で返しておんなじくらいの意地悪で返す。

ふたりそろうと幼稚園児みたいだとクラスメイトに笑われ、ふたりして怒ってはお互いのせいだっていがみ合うし、好きな食べ物はちっとも合わないから購買で顔を合わせたらセンスない!っていうのは日常茶飯事。

身長は男子のなかじゃそんなに高くなくて、それなのに私より15センチは大きいからって威張って頭に肘乗せてくるし、運動が苦手な私の走りを見て馬鹿にするような男だ。



わたしも、篠崎七星のことが嫌いである。



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